放射線治療の故郷

~備忘録!日常の診療でフッと思った疑問の解消に~

10. 骨軟部腫瘍

骨軟部腫瘍

骨、筋肉、血管などの結合組織と呼ばれるものから発生した悪性腫瘍の総称である。骨軟部腫瘍には多様なものが含まれ、解剖学的にもさまざま、病理組織学的にもさまざまである。

年齢もすべての年齢で起こりうるが、比較的若年者に多い。腫瘍の進行性もさまざまで急速に広がるものからゆっくりと進行するものまであるが、発見された時には10cm以上の巨大なものとなっていることもまれではない。

放射線への感受性は低いものが多く、一般的には抵抗性である。

 

四肢に発生した場合は、四肢切断術が施行されることが多かったが、現在は腫瘍広範切除術と術前・術後の化学療法を併用し患肢温存を企図するようになってきた。

放射線治療は、切除縁を縮小する保存的手術実施のための術前または術後照射として行われたり、あるいは切除縁不十分の場合の局所制御の向上を狙って術後照射として行われる。

巨大腫瘍や切除困難な部位では根治的放射線治療が試みられるが、一般的な放射線治療の成績は不良であり、後述する粒子線治療の適応を考慮する1~6)。病期分類による適応の違いは確立されていない。

 

10-1.骨腫瘍

放射線治療の対象として比較的よく遭遇する腫瘍として、骨肉腫と脊索腫を概説する。

骨肉腫は代表的な骨の悪性腫瘍であり、放射線や化学療法は効きにくいとされる。近年、術前化学療法の進歩により、限局性の四肢原発骨肉腫の患肢温存率は80%に達しており、治癒切除例では10年生存率も60%以上が得られるようになってきた3、5)

しかし、骨盤や脊椎に発生すると機能障害を起こさずに外科切除することはきわめて困難である。そうした手術不能例では、放射線治療(+化学療法)の5年生存率は10%以下であり、予後不良である。

脊索腫は、まれな腫瘍であり、頻度は骨軟部腫瘍の3%にすぎないが粒子線治療で治せる難治性腫瘍として有名である。50%は仙骨から発生し、増大は緩徐であるが、発見時には12cm以上の巨大腫瘍を形成していることもまれではない2)

仙骨脊索腫に対する一般的治療法は切除手術だが、第2仙椎より上位で完全切除すると直腸膀胱障害などを避けるのは困難であるため、機能障害を避ける上でも放射線治療が重要である。しかし、通常放射線治療では5年局所制御率が30%程度と低い。有効な化学療法はない。仙骨以外では頭蓋底からの発生が多い6)

 

骨腫瘍の組織型による放射線感受性は、Ewing肉腫>巨細胞腫>骨肉腫>悪性線維性組織球腫(malignant fibrous histiocytoma: MFH)> 軟骨肉腫> 脊索腫とされるが、Ewing肉腫以外は、放射線抵抗性と考えて差し支えない。

 

CTVはGTVに3~5cmのマージンをつけた範囲として設定し、50~60Gy後のブースト照射では1~3cmのマージンで設定する。

 

総線量はEwing肉腫で、55.8 /31回~60Gy/30回、その他の腫瘍で70Gy/35回を目標とするが、周囲の危険臓器(脊髄、消化管など)のため、十分な線量を投与できないことも多い。根治照射を行う際には、後述する粒子線の適応であるかどうかも検討すべきである1~3)。術後照射の線量は、高感受性腫瘍で50Gy/25回、低感受性腫瘍で66Gy/33回を目標とする。

照射野の設定

  • 初期の照射野はGTV+3~5cm、ブースト照射はGTV+1~3cm

推奨線量

  • 根治照射:Ewing肉腫55.8/31回~60Gy/30回、その他70Gy/35回
  • 術後照射: 高感受性腫瘍50Gy/25回、低感受性腫瘍66Gy/33回

 

10-2. 軟部腫瘍

組織型による放射線感受性は、PNET(primitive neuroectodermal tumor)> Ewing肉腫> 横紋筋肉腫>MFHの一部>粘液型脂肪肉腫>平滑筋肉腫>円形細胞型脂肪肉腫>>紡錘形細胞型・多形性MFH>線維肉腫といわれるが、PNET、Ewing肉腫、横紋筋肉腫(成人発生)以外は、放射線抵抗性と考えて差し支えない。

照射法は、CTVはGTVに3~6cm のマージンをつけた範囲として設定し。筋膜でまとめられる関連筋群全体を含むように心がける。

総線量はPNET、Ewing肉腫、横紋筋肉腫(成人発生)で、55.8/31回~60Gy/30回、その他の腫瘍で70Gy/35回/7週を目標とするが、周囲の危険臓器(脊髄、消化管など)のため、十分な線量を投与できないことも多い。

根治照射を行う際には、後述する粒子線の適応であるかどうかも検討すべきである4)、術後照射の線量は、高感受性腫瘍で50Gy/25回、低感受性腫瘍で66Gy/33回を目標とする。術後照射では術創を十分含める。

照射野の設定

  • 初期の照射野はGTV+3〜6cm、ブースト照射を行う場合はGTV+2〜3cm

推奨線量

  • 根治照射:高感受性腫瘍55.8 /31回~60Gy/30回、低感受性腫瘍70Gy/35回
  • 術後照射: 高感受性腫瘍50Gy/25回、低感受性腫瘍66Gy/33回

 

10-3. 切除不能骨軟部腫瘍

骨・軟部腫瘍は、過去20年間、切除を基本とした集学的治療が最も成果を上げてきた疾患である。

しかしながら、仙骨部肉腫を例にとると、切除が第一選択であるのは変わりないが、腫瘍の存在範囲によっては高位仙髄の切除が必要となり、排便排尿障害など術後の機能損失が大きい。

手術自体の侵襲も大きいため、特に高齢者に対しては負担の大きい治療である。また、発症した時点ですでに腫瘍が巨大なことも多く、切除適応とならない症例も多い。

 

放射線治療も最近では外部照射だけでなく小線源なども駆使され、四肢の骨軟部腫瘍で患肢温存等に重要な役割を果たしている1)

しかし、本腫瘍は一般に放射線抵抗性であり、切除縁確保が困難で明らかな腫瘍残存を認める場合や、切除非適応となった症例での放射線の効果は不十分とされている。骨肉腫などの一部の組織型では化学療法が有効であるが、それだけでは局所療法として不十分である。

粒子線治療は、その線量集中性により従来よりも高線量の投与が可能であり、放射線抵抗性の骨・軟部腫瘍に対しても有効であると期待される2~6)粒子線治療ではハーバード大、筑波大の頭蓋底脊索腫に対する陽子線治療成績7、8)と放医研の体幹部骨軟部腫瘍に対する重粒子線治療の成績が有名である1)

放医研では、第Ⅱ相試験から、粒子線治療により皮膚線量の低減を図る工夫をすることによりほとんど有害事象なく、5年局所制御率は79%、5生存率は61%と優れた成績が得られている1)。頭蓋底発生を除く脊索腫95例においては、5年局所制御率が88%で、5年生存率は86%であった2)

 

参考文献

1) Davis AM et al: Late radiotherapy mobidity following randomization to preoperative versus postoperative radiotherapy in extremity soft tissue sarcomas. Radiother Oncol 75(1): 48-53, 2005

2) Kamada T et al: Efficacy and safety of carbon ion radiotherapy in bone and soft tissue sarcomas. J Clin Oncol 20(22): 4466-4471, 2002

3) Imai R et al: Carbon ion radiotherapy for unresectable sacral chordomas. Clin Cancer Res 10(17): 5741-5746, 2004

4) Sugahara S et al: Carbon ion radiotherapy for localized primary sarcoma of the extremities: results of a phase I/Ⅱ trial. Radiother Oncol 105(2): 226-231, 2012

5) Serizawa I et al: Carbon ion radiotherapy for unresectable retroperitoneal sarcomas. Int J Radiat Oncol Biol Phys 75(1): 1105-1110, 2009

6) DeLaney TF et al: Radiotherapy for local control of osteosarcoma. Int J Radiat Oncol Biol Phys 61: 491-498, 2005

7) Munzenrider JE et al: Proton therapy for tumors of the skull base. Strahlenther Onkol 175 Suppl 2: 57-63, 1999

8) Igaki H et al: Clinical results of proton beam therapy for skull base chordoma. Int J Radiat Oncol Biol Phys 60(4): 1120-1126, 2004