放射線治療の故郷

~備忘録!日常の診療でフッと思った疑問の解消に~

11. 小児

小児

小児腫瘍は、いずれもまれな腫瘍であり、晩期障害を避けるために細心の注意が必要である。たとえば、骨の成長障害を避けるために骨端線をはずすことや不妊を避けるために卵巣をブロック(外科と話し合ってあらかじめ照射野外になるように卵巣を移動させてもらうこともある)するなどの工夫が必要である。

実際の治療では、症例ごとに国立成育医療センター(わが国で最も経験がある施設である)の放射線治療部にコンサルテーションして最新プロトコルに基づいて治療することが望ましい。

 

11-1. ウィルムス腫瘍

わが国での症例数は年間約70~80例といわれているまれな腫瘍である。National Wilmusʼ Tumor Study Groupe(NWTSG)のランダム化比較試験の結果、治癒可能な腫瘍となっている1~3)

 

現在はNWTSGの後を受けたCOG(Childrenʼs Oncology Group)プロトコルにそって治療を行うのが標準的である。強力な化学療法とともに予後良好群(Favorable Histology)のⅢ-Ⅳ期、びまん性退形成性腎芽腫の全病期、腎明細胞肉腫(Clear cell sarcoma of the kidney)の全病期、横紋筋腫瘍様肉腫(Rhabdoid tumor: RTK)の全病期が放射線治療の適応であり、術後照射を10.8 Gy/6回/8日で行う。

 

未分化腫瘍のⅢ期、RTKは予後不良なので19.8 Gy/11回まで行う。術後照射は術後9日以内に開始するように定められている1)。CTVは初診時に認められた腫瘍とリンパ節転移を含み、実際の照射野は1cm以上のマージンをつけるとともに側弯症を予防するために椎体全体を含むことが肝要である。腹膜播種が疑われる症例では、10.5 Gy/7回の全腹腔照射(可能な限り大腿骨頭をブロック)を行う。

照射野の設定

  • 術後照射:CTVは初診時に認められた腫瘍+リンパ節転移巣(上記参照)
  • 腹膜播種例:全腹腔照射

推奨線量

  • 術後照射適応症例は、10.8Gy/6回(RTKなど19.8Gy/11回:上記参照)、全腹腔照射の場合10.5Gy/7回

 

11-2. 神経芽腫

小児固形癌の中では、最も頻度が高く、わが国では年間320例程度の発生数であるといわれている。年齢分布は0歳、次いで3 歳にピークを示す二峰性のパターンを呈する1歳以下の症例は進行期にあっても長期生存の可能性が高く、自然退縮もあり得る。

もう少し年長児(2歳以上)で発見されることが多い進行例は治療が困難なものが多い4)

 

わが国では、病期分類に日本小児外科学会悪性腫瘍委員会分類が用いられる。予後不良因子として腫瘍細胞の染色体数が2倍体、MYCN遺伝子の増幅、trk A遺伝子の低発現、血清NSE(Neuron specific enolase)の高値、が挙げられる4)

 

予後不良因子をもつ進行神経芽腫の治療法は、初診時に開腹生検を施行して組織診断とともに病理組織の嶋田分類5)、遺伝子検索が行われる。

この後、シスプラチンを中心とした導入化学療法が3~4コース行われ、縮小したところで原発巣の切除とリンパ節郭清が行われ、この後、術後照射が行われる6)。骨転移を伴う高リスク症例などでは、造血幹細胞移植を前提とした骨髄破壊的な化学療法も行われる7)

 

こうして高リスクの進行神経芽腫でも治癒する症例がでてきている。骨転移部には化学療法と併行して19.8 Gy/11回の放射線治療が行われる。

 

照射野は、小児外科医の術中の腫瘍進展範囲の情報に基づいて手術前の原発巣とリンパ節転移に臨床的なマージン(1.0~1.5cm)をとってCTVを形成する。年齢により線量は異なり、1歳以下は19.8Gy/11回、2歳までは25.2Gy/14回、2歳以上30.6 Gy/17回である。

骨髄破壊的な化学療法を行う場合は線量を減量でき19.8 Gy/11回(肉眼的残存病巣へはさらに10.8 Gy/6 回ブースト照射)でよい。線量制約は、肝臓の50%以上が9Gy未満、健側腎臓の50%以上が8Gy未満となるようにする。

照射野の設定

  • 術後照射:手術前の原発巣とリンパ節転移、ブースト照射を行う場合は肉眼的残存病巣

推奨線量

  • 術後照射適応症例は1歳以下:19.8Gy/11回
  • 2歳まで:25.2Gy/14回
  • 2歳以上:30.6Gy/17回
  • 骨髄破壊的な化学療法を行う場合:19.8 Gy/11回(肉眼的残存病巣へはさらに10.8Gy/6回ブースト照射)
  • 骨転移巣:19.8Gy/11回

 

11-3. 横紋筋肉腫

わが国での症例数は年間約90症例といわれている。横紋筋肉腫は筋膜にそって進展し、浸潤性が強い。手術だけでは局所再発を来しやすく放射線治療と化学療法を加えた集学的治療が必要である。

Intergroup Rhabdomyosarcoma Study(IRS)による臨床研究が有名であり8~11)、IRS-Vのプロトコルにそって治療されることが多いが10、11)、日本横紋筋肉腫研究グループ(JRSG)のガイドラインも取り入れられつつある。

組織型は胎児型(Embryonal type)と胞巣型(Alveolar type)に分けられ、胞巣型は予後不良である。

 

IRSによる臨床分類では、Group I(組織学的完全切除)、Group Ⅱ(顕微鏡的術後残存)、Group Ⅲ(肉眼的腫瘍残存)、Group Ⅳ(遠隔転移、悪性胸腹水、播種のいずれかを伴う)に分けられ、GroupⅠの胞巣型およびGroupⅡは、41.4 Gy/23回の術後照射を必要とする。

GroupⅢ では、眼窩で45Gy/25回、その他の部位で50.4Gy/28回を照射する。照射開始時期は術後化学療法開始後3週目である。GTVは原発病巣+腫大リンパ節で、CTVはGTV+1.5cmで開始する。

 

照射法は骨格系の変形を避けるために、椎体全体を照射野に入れるなどの均等な線量投与を心がける。その結果、前後対向2門などの単純な照射法が選択されることが多い。

照射野が大きくなる場合は1回線量を1.5Gyにしたり、36Gy~41.4Gyで照射野を縮小するなどの工夫が必要である。

 

小児での正常組織の耐容線量は、IRS-Vプロトコルに掲載されているので、この耐容線量を超えないように治療計画を立てる。小児において41.4Gyは晩期障害を避け得るぎりぎりの線量であり、常に合併症を念頭に置く必要ある。

照射野の設定

  • 原発病巣+腫大リンパ節+1.5cmが原則(上記参照)

推奨線量

  • 術後照射:Group Ⅰの胞巣型およびGroupⅡは41.4 Gy/23回。GroupⅢは眼窩で45 Gy/25回、その他の部位で50.4Gy/28回。

 

参考文献

1) Green DM: The treatment of stages I- Ⅳ favorable histology Wilms’ tumor. J Clin Oncol 22(6): 1366-1372, 2004

2) Green DM et al: Comparison between single-dose and divideddose administration of dactinomycin and doxorubicin for patients with Wilms’ tumor: a report from the National Wilms’ Tumor Study Group. J Clin Oncol 16(1): 237-245, 1998

3) Dome JS et al: The treatment of anaplastic histology Wilms’ tumor: a results from the fifth National Wilms’ Tumor Study Group. J Clin Oncol 24(15): 2352-2358, 2006

4) Maris JM: Recnt advances in Neuroblastom. N Engl J Med 362(23): 2202-2011, 2010

5) Shimada H et al: The International Neuroblastoma Pathology Classification for prognostic evaluation of patiients with peripheral neuroblastic tumors: a report from the Children’s Cancer Group. Cancer 92(9): 2451-2461, 2001

6) Castleberry RP et al: Radiotherapy improves the outlook for patients older than 1 year with Pediatric Oncology Group stage Cneuroblastoma. J Clin Oncol 9(5): 789-795, 1991

7) Bradfield SM et al: Fractionated low-dose radiotherapy after myeloablative stem cell transplantation for local control in patients with high-risk neuroblastoma. Cancer 100(6): 1268-1275, 2004

8) Wolden SL et al: Indications for radiotherapy and chemotherapy after complete resection in rhabdomyosarcoma: A report from the Intergroup Rhabdomyosarcoma Studies I to Ⅲ . J Clin Oncol 17(11): 3468-3475, 1999

9) Crist WM et al: Intergroup rhabdomyosarcoma study-IV: results for patients with nonmetastatic disease. J Clin Oncol 19(12): 3091- 3102, 2001

10) Raney RB et al: The Intergroup Rhabdomyosarcoma Study Group (IRSG): Major Lessons From the IRS-I Through IRS-IV Studies as Background for the current IRS-V Treatment Protocols. Sarcoma 5(1): 9-15, 2001

11) Raney RB et al: Results of the Intergroup Rhabdomyosarcoma Study Group D9602 protocol, using vincristine and dactinomycin with or without cyclophosphamideand radiation therapy, for newly diagnosed patients with low-risk embryonal rhabdomyosarcoma: a report from the Soft Tissue Sarcoma Comimittee of the Children’s Oncology group. J Clin Oncol 29(10): 1312-1318, 2011