耐容線量
1991年にEmamiらが部分耐容線量の概念を提唱し、それを照射体積との関連で示したデータは現在においても有用であり、現在でも用いられている。
しかし、臨床データは積み重ねられており、これだけで耐容線量を考えている人はもはやいない。
2010年にMarksらは3次元治療計画時代に有効に使用できる臓器ごとの線量・体積・有害事象の確率の関係を示したデータ(Quantitative analysis of normal
tissue effects in the clinic:QUANTEC)を提示した。このデータも完成されたものではなく、正しく適応されなければならないことはいうまでもない。
ここでは、現在においても用いられているEmamiの表とQUANTECの表に加えて、耐容線量が低く、成長障害を考慮する必要がある小児の耐容線量についてはIRS-Vに準拠した小児の耐容線量を示した。
Emamiの耐容線量表
Quantitative analysis of normal tissue effect in the clinic(QUANTEC)
IRS-Vに準拠した小児の耐容線量
頭頸部のリンパ節領域
リンパ節領域を下表のごとく定義して、原発巣、リンパ節転移の状況から顕微鏡的な転移の範囲をデータに基づいて推測する。
強度変調放射線治療の登場により、照射が必要と考えられる領域に必要と思われる線量を投与するとともに、重要臓器の線量を耐容線量以下に抑えるという治療が可能となった(Som PM et al: Imaging-based nodal classification for evaluation of neck metastatic adenopathy. AJR Am J Roentgenol 174(3): 837-844, 2000 の図を参考にすると理解しやすい)。
強度変調放射線治療を始めるにあたって
通常の3次元治療は最適と思われる照射門、各門ごとの投与線量を決定し、線量分布を計算する。
その線量分布が妥当であると判断すれば治療を開始し、妥当でないと判断されれば妥当と判断されるまで試行錯誤を繰り返すというものである。
これに対して、強度変調放射線治療は腫瘍に照射すべき線量、重要臓器に線量・体積関係(限界となる線量とその線量が許される体積)を処方し、コンピュータにより設定した照射方法を実現するための照射方法を逆計算して各照射門の投与線量を決定する方法である。
考え方の逆転であり、コペルニクス的転回といえる。ここで出てきた解は、各照射門の不均質な線量分布であるが、全門の線量分布を足し合わせるとより理想に近づいた線量分布となる。
ここで求められるのは、最適な腫瘍照射線量と重要臓器の照射線量の限界についての臨床データである。また、化学療法が加わる場合には、その修飾によりさらに複雑となる。
以下に頭頸部癌のリンパ節の照射範囲を決定するための参考資料を示す。