放射線治療の故郷

~備忘録!日常の診療でフッと思った疑問の解消に~

前立腺摘除術後の放射線治療は経過観察+PSA再発後の救済放射線治療に比べ有用性を示さず

根治的前立腺摘除術のあとの術後放射線治療は、経過観察しPSA再発時に救済放射線治療を行う場合に比べて、有用性が示されない可能性が、放射線治療のタイミングを検討したランダム化比較対照試験RADICALS-RTで明らかになった。

術後放射線治療では泌尿器や消化管の合併症も多い傾向があった。9月27日から10月1日までスペイン・バルセロナで開催されている欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で、英国Royal Marsden HospitalのChris Parker氏らが発表した。

 

試験は、根治的前立腺摘除術を受けた患者で、術後にPSA≦0.2ng/mL、術後4-22週、リスク因子(pT3/4、グリーソンスコア7-10、断端陽性、術前PSA≧10ng/mL)が1つ以上ある患者を対象に行われた。

対象患者を、術後22週以内に放射線治療を受ける群(ART群)と、経過観察およびPSA再発(連続2回の測定で上昇かつPSA>0.1ng/mLもしくは連続3回の測定で上昇)のときに救済放射線療法を受ける群(SRT群)に分けた。放射線治療は52.5Gy/20回もしくは66Gy/33回が計画されていた。

主要評価項目は無遠隔転移期間(FFDM)とした。試験はARTによって10年時点で90%から95%への改善を検出するデザインとし、有意水準5%、検出力80%にはFFDMは67イベント、1300人までが必要であった。

副次評価項目は、生化学的無増悪生存期間(bPFS)、プロトコルにないホルモン療法を実施しない期間、臨床的増悪、安全性、全生存期間(OS)であった。bPFSは、RT後にPSA≧0.4ng/mL、いずれかの時点でのPSA>2.0ng/mL、臨床的増悪(局所再発もしくは遠隔転移)、プロトコルにないホルモン療法の開始、あるいは前立腺癌による死亡までの期間とした。

試験には1396人が登録され、ART群が697人、SRT群が699人だった。英国の患者が82%を占め、デンマーク13%、カナダ4%、アイルランド1%だった。観察期間中央値は5年。患者背景はバランスがとれ、年齢中央値は2群とも65歳で、グリーソンスコアが8点以上の患者がSRT群17%、ART群16%、精嚢病変を有する患者が20%と19%だった。

主解析はFFDMで67イベント後に計画されていたが、RADICALS-RT試験と他2試験によるメタ解析を行うため、bPFSと安全性について早期解析が実施された。

ART群では93%は放射線治療を受け、7%は放射線治療を開始していなかった。SRT群ではランダム化後8年までに放射線治療を受けていた患者は33%だった。SRT群のPSA中央値は0.2ng/mLだった。

放射線治療に加えホルモン療法も受けていた患者は、ART群の26%(166人)、SRT群の31%(71人)だった。

5年時点のbPFS割合はART群が85%、SRT群が88%、ハザード比は1.10(95%信頼区間:0.81-1.49)、p=0.56で有意な違いはなかった。

プロトコルにないホルモン療法を受けた患者はART群で42人、SRT群で49人だった。プロトコルにないホルモン療法の開始までの期間のハザード比は0.88(95%信頼区間:0.58-1.33)、p=0.53であった。

FFDMはSRT群でのみ解析され、FFDMイベントは22人だった。OSについてもSRT群でのみ解析され、OSイベントは26人で、前立腺癌による死亡は8人だった。

安全性(RTOG基準)に関しては、2年以内において、グレード3以上の膀胱炎がART群は2%、SRT群は0.7%、グレード3以上の血尿が3%と0.3%、グレード3以上の尿道狭窄が5%と4%だった。2年以降では、グレード3以上の膀胱炎がART群は1%、SRT群は0.6%、グレード3以上の血尿が4%と0.3%、グレード3以上の尿道狭窄が4%と3%だった。

消化管毒性については、2年以内において、グレード3以上の下痢がART群は1%、SRT群は0.4%、グレード3以上の直腸炎が1%と0.4%だった。2年以降では、グレード3以上の下痢がART群は1%、SRT群は0.3%、グレード3以上の直腸炎が1%と0.2%だった。また患者報告アウトカムで、尿失禁および便失禁は1年時点で有意にART群が不良だった。

以上の結果から、RADICALS-RT試験の最初の解析で、救済放射線治療に比べて、術後放射線治療でbPFS、ホルモン療法までの期間は改善しなかったとした。またFFDMやOSにおける術後放射線治療の効果を評価するには長期観察が必要だが、今回の結果は根治的前立腺全摘除術後のPSA再発に対する救済放射線治療の実施を支持するものであるとした。